🌸 週末は生活を楽しむ贅沢な時
週休二日制は1965年に経営の神様と呼ばれた松下幸之助氏が提唱しました。いわば働き方改革のはしりですが、その頃続く企業はまだ少なく、役所など土曜日は“半ドン”と呼ばれ昼から休みでした。
そんな時代だった1970年代初期、某飲料会社は自社のワインを売るべく、週末を「生活を楽しむ贅沢な時間」と定義付けたキャッチコピーでテレビCMを行いました。
「金曜日には、花買って、パン買って、ワインを買って、帰ります」
男性が花束とバケットとワインが詰まった紙袋を抱えて歩いていく。これから奥様と囲む食卓に並ぶもので、明日は休み、心も軽い、豊かな週末が始まる。その象徴に花が選ばれたのは、花屋として嬉しく思います。
🌸 「自分のために」花を買う習慣
その後オイルショックの影響もあってか週休二日制はなかなか進まず、浸透したのは金融機関が完全に土曜日休みとなる平成になってからです。そしてバブルが訪れます。バブルは夢の時代であり、各業界にそれぞれ伝説のエピソードが残っています。
花屋でも絶頂期を知る先輩の方に聞くと景気が良いです。企業の祝い花などの予算は高く、経費で何でも落ちたそうです。華やかな夜の銀座を、胡蝶蘭やバラを抱えて一晩中配達し続けていたときの売上はまさしく「桁違い」。花の金曜日は煌びやかで、そしてバブルは当たり前のように弾けていきました。
その後花屋はどうなっていったのか、売上減で閉店する一方、新しい花屋が登場します。「花のある生活を提案する」新しい店です。青山や中目黒といった街にインテリア性を重視した花屋が次々開店し,週末や休日に「自分や家族のために花を買う」人々が訪れます。メディアにも取り上げられ、高年層から若い会社員にまで広まったのです。不況の中、ガーデニングブームも起こります、自分へのご褒美に花を買う、自分の気持ちを癒すために花を買う、そんな習慣を持つ人が静かに増えていきました。これは、都市の労働・生活リズムの変化=働き方改革とも言えるでしょう。花を買う行為が「贈り物」だけではなく「自己表現」「メンタルケア」にもつながってきたことを現わしています。
🌸 「自宅での時間」をどう豊かに過ごすか
そして今、長いコロナ自粛のあとに在宅ワークという選択肢も得た現代の私たちは、「家で過ごす時間」と向き合って生きています。暮らしを豊かにする=自宅の時豊かにすることです。花はその時間を彩る、なくてはならない存在となっていきそうです。
ようやく秋の風が心地よく感じるこの週末は、お気に入りの花を選んで家に帰りましょう。